交通事故における過失割合
過失割合
交通事故が発生すると,示談交渉の時や訴訟の時に過失割合をどうするのかという話になります。
過失割合って何なのでしょうか?
そもそも,交通事故において,相手方に対して賠償を請求するのは,法律的にいうと不法行為(あるいは自賠法)に基づく損害賠償請求ということになります。
不法行為に基づいて損害賠償するためには,相手方に故意又は過失があることが前提となります。すなわち,相手方に過失があるから損害の賠償を請求できるのです。
これに対して,相手方は,損害賠償請求をした側に対して,そちらにも過失があるということを主張することができ,これが過失相殺の主張です。過失相殺の主張があり,
損害賠償請求をしている側にも過失があることが認められれば,その過失の割合に応じて損害賠償額が減少することになります。
つまり,相手方に過失があって損害賠償が可能だとしても,こちら側にも過失がある場合には,相手からこちらの過失を主張され,それが認められる場合には,その分,
損害賠償額が減ってしまうというわけです。
また,相手方からこちら側の過失があることを前提に,不法行為に基づく損害賠償請求がされる可能性もあります。その場合には,こちらの過失が認められれば,その分の損害賠償をしなければならなくなります。
このように,交通事故(不法行為)がどちらの過失に基づいて生じたのか,また,請求した側にも過失があるのかによって,そもそも損害賠償を請求できるのか,損害賠償額が減額されるのかがかわってくることになります。
そのため,交通事故が発生した場合には,どちらの過失によるものなのか,それぞれの過失の程度はどうなるのかが大変重要になってくるのです。
そこで,一般的に,その交通事故における過失の割合はどうなるのかが話し合われているのです。
過失割合は誰が決めるのか
では,交通事故の過失割合は誰が決めるのでしょう?
交通事故の過失割合は,最終的には,訴訟において,裁判官が証拠に基づいて判断することになります。
交通事故の当事者間で,過失割合について,双方の言い分に食い違いがあり,合意できなければ,最終的には,裁判所に訴訟を提起して,裁判官に判断してもらわなければなりません。
ただ,交通事故は,年間大量に発生しており,これまでの裁判でどのように判断されてきたかの蓄積もあるため,裁判になればだいたいどのような判断となるのかの見通しがつきます。
そのような過失割合の認定の見通しについては,「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(別冊判例タイムズ第38号)などの書籍も出版されており,このような認定基準に基づいて,判断することになります。
しかし,このような認定基準も絶対ではなく,一定の類型的な交通事故に関しての判断要素をまとめたものに過ぎません。交通事故は千差万別であり,一つとして同じ交通事故はありませんので,今度は,基礎とする認定基準をどれにするかで争いになったりします。
先ほども述べたように,過失割合は,最終的には裁判官の判断によりますので,当該事故において,どのような過失を基礎づける事実があるのかを基準に,裁判をしてでも明確な過失割合を判断してもらう必要があるのか,それとも,時間や費用が掛かるのを避けて,いずれかの割合で折り合いをつけるのかの判断が必要となってきます。