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遺産には何が含まれるのか?

遺産分割の対象となる財産

遺産分割をする前提として,分割しなければならない財産とは何でしょうか。
 
すなわち,遺産分割協議が必要な財産には,どのようなものが含まれるのでしょうか。
 
まず,日本の相続においては,包括承継を原則としますので,相続が開始すると,亡くなった人(被相続人)の財産に属した一切の権利義務は,すべて相続人が承継します。(ただし,後記の相続財産に属さない財産・権利は,相続されません。)
 
そして,遺産分割は,共同相続における遺産の共有関係を解消し,遺産を構成する個々の財産を各相続人に分配して,それらを各相続人の単独所有に還元するものですので,共同相続人間で共有関係にある財産が,遺産分割が必要な財産ということになります。
 
そのため,相続された財産の中で,相続により共有関係にある財産が,遺産分割が必要な財産ということになります。

相続財産に属さない財産・権利

亡くなった人(被相続人)の財産・権利であっても,相続人に相続されないものがあります。また,亡くなった人(被相続人)の死亡によって生じる権利であるため,相続財産に当たらないものもあります。
 
一身専属権
まず,亡くなった人(被相続人)の一身に専属したものは,相続人に承継されません。
例えば,生活保護受給権や公営住宅の使用権,著作者人格権などは,亡くなったその人の人格や才能,地位と密接不可分の関係にあるものですので,相続人による権利行使・義務の履行を認めることが不適当なもののため,承継されません。
 
祭祀財産
祖先祭祀のための財産(例えば,位牌や墓地など)は,祖先の祭祀を主宰すべき者(祭祀主宰者)が承継することになりますので,相続の対象となる財産には当たりません。
祭祀主宰者は,①亡くなった人(被相続人)の指定,指定がない場合は,②慣習,慣習が明らかでない場合は,③家庭裁判所の審判により決まります。
 
死亡退職金
死亡退職金は,死亡に際して勤務先から支払われる退職金で,法律や内規,就業規則などによりその受給者の範囲や順位が定められており,受給権者が自己固有の権利として取得するものと考えられますので,原則として,相続財産には当たりません。
 
生命保険金
生命保険金は,保険契約に基づいて受取人が取得するものですので,受取人が被保険者自身である場合(貯蓄型の生命保険)は,相続人が受取人としての地位を承継しますので,相続財産となりますが,受取人が被保険者以外の特定の人の場合には,その特定の人が,保険契約上の権利として取得するものですので,相続財産には当たりません。

遺産分割の対象とならない相続財産

判例上,可分な債権や債務については,法律上当然に分割され,各共同相続人がその相続分に応じてその債権・債務を承継するとされています。
 
そのため,銀行預金や借金など,金銭債権(債務)については,通常,可分な(分割することができる。)ものですので,理論的には,遺産分割の対象とはならないということになります(協議するまでもなく,すでに分割取得している。)。
 
実際に,現存する相続財産が金銭債権だけである場合に,分割の対象となる遺産(相続財産)が存在しないとして,遺産分割の申立が却下された例もあります。
 
ただ,遺産分割協議において,金銭債権は分割の調整に有用であることは間違いなく,金銭債権を除いて遺産分割協議を行うことは現実的ではありません。当事者間で合意があれば,金銭債権も含めて遺産分割協議をすることができますし,一定の事情があれば,金銭債権を遺産分割の対象として認められる場合もあります。
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