遺言によってどのようなことができるか
遺言によって,どのようなことができるか
①相続に関すること,②財産の処分に関すること,③身分に関すること,④「遺言の執行」に関すること,などについて遺言することができます。
「遺言」によりさまざまなことができますが,その中には法的な効力を生じるものとそうでないものとがあります。
法的な効力を生じるものとは,遺言によって行うことが法律で認められているもので,その内容の実現が法的に約束されているものをいいます。それ以外の遺言は,その内容を実現するための法的手段がないものをいいます。だからといって,遺言することが禁止されているわけではありません。
法的な効力を生じる遺言としては,次の4つが挙げられます。
① 相続に関すること
相続に関するものは多岐にわたりますが,主なものは次のとおりです。
1 法定相続分と異なる相続分を指定したり,その指定を第三者に委託すること
2 遺産分割の方法を指定したり,その指定を第三者に委託したり,遺産の分割を禁止したりすること
3 「遺贈」「贈与」を受けた人(=「特別受益者」)がいる場合,「持戻し」を免除すること
4 相続人が遺産分割によって取得する財産に過不足がある場合,共同相続人間の担保責任を減免したり,加重したりすること
5 推定相続人について,廃除により相続権を失わせたり,廃除を取り消したりすること
6 遺留分の減殺の方法を指定すること
7 系譜,祭具,墳墓などを承継してこれを守る人(=「祖先の祭祀主宰者」)を指定すること
② 財産に関すること
財産の処分に関するものとしては,次のようなものがあります。
1 財産を第三者などに遺贈すること
2 相続財産に属さない権利の遺贈について,別段の意思表示をすること
3 一般財団法人の設立のため,定款の記載・記録事項を定めること
4 信託を設定すること
5 保険金の受取人を変更すること
③ 身分に関すること
身分に関するものとしては,次のようなものがあります。
1 嫡出でない子を認知すること
2「未成年後見人」や「未成年後見監督人」を指定すること
④ 遺言の執行に関すること
「遺言の執行」に関するものとしては,「遺言執行者」を指定したり,その指定を第三者に委託したりすることが挙げられます。
なお,遺言することができないものとしては,一定の身分行為(=婚姻,離婚,養子縁組・離縁),債務の分割方法の指定があります。
一定の身分行為については,基本的に双方の合意が必要な行為なので単独で行う遺言はできません。また,債務の分割方法の指定によって債権者を拘束することはできないため,被相続人の債務を特定の相続人に承継させるような遺言をすることはできません。
⑤ その他の遺言事項(=付言事項)
法的な効力はなくても,遺言者の家族などに対する気持ちや希望,葬儀や献体のこと,死後の事務処理のことなどを付言事項として遺言書に書いておくことは,差し支えありません。
そのこと自体に法的な効力はありませんが,遺言者の意思や希望が尊重されて,そのとおりになることもあります。遺言する際には,そのような希望などがあれば,それを書き加えておくことが望ましいでしょう。