個人破産手続きの概略
弁護士の受任通知
弁護士が破産手続を受任すると,直ちに破産者の代理人として全ての債権者に対して受任通知を発送します。併せて債権調査も行います。弁護士が受任した後は全ての債権者に対する支払いを停止することになりますので,返済に窮する状態から免れることになります。また,弁護士が介入した後は,弁護士が全ての債権者に対する窓口となりますので,破産者の自宅や職場等に,直接,支払の督促の電話等がかかることは無くなります。
受任してから破産手続きの申立てまでの準備期間は,事案にもよりますが,概ね2,3ヶ月です。もちろん,この間にお仕事をして頂いて構いませんし,債権者に対する返済もしなくて済みます。むしろ,債権者に対する返済は偏頗弁済(へんぱべんさい)と言って,他の債権者にとって不平等な弁済となるので,後に否認される可能性がありますから,法律上,返済してはいけないということになります。
破産手続き開始決定後の手続き
弁護士により破産手続きの申立がなされると,裁判所により破産手続き開始決定がなされます(昔は「破産宣告」と言っていました。)。同決定以後の手続については,破産管財人が選任されないケース(同時廃止)と,選任されるケース(管財事件)に大きく分かれます。
(1) 同時廃止
「同時廃止」とは,破産者の資産が総額99万円以下で破産手続き費用も賄えないという場合に,破産管財人を選任することなく,破産手続き開始決定と同時に破産手続きを終了させることをいいます。簡単に言うと,総資産が99万円以下であれば,破産管財人が付くことなく終了してしまうということです。あとは免責手続きがあるのみです。
もっとも,不動産を所有していたり,個人事業者である場合には,総資産が99万円以下であっても,破産管財人が選任されるケースがあります。
同時廃止事案の弁護士費用は30万円(消費税別。個人事業の方の場合の弁護士費用は債務総額にもよりますのでご相談下さい。)です。分割払いも可能です。なお,当法人は法テラスと契約しておりますので,一定の資力審査がありますが,民事法律扶助制度により国の立替制度を利用することも可能です。
(2) 管財事件
資産総額が99万円を超える場合,不動産を所有している場合,事業者の方の場合等については,破産管財人が選任されることがあります。
破産管財人が選任されるケースを「管財事件」と言うことがあります。管財事件の場合は,破産管財人が破産者の資産の管理・処分権を引き継ぎ,資産の換価をしたうえで,債権者に配当できるほどのお金を集めることが出来れば,配当手続きが行われます。また,管財事件では,原則として,債権者集会が開かれますので,その都度,破産者は集会に出席する必要がありますが,弁護士も集会に出席しますのでご安心下さい。配当できるほどのお金が形成できない場合は,配当に至らずに破産手続きが終了することになります。これを「異時廃止」と言います。
管財事件の費用としては,弁護士費用については同時廃止のケースと同じく30万円(消費税別。なお,個人事業の方の場合の弁護士費用については前記のとおりです。)ですが,これとは別に破産管財人に引き継ぐお金として最低でも30万円程のお金(予納金)を用意して頂く必要があります。予納金についても個人破産の場合には,一定の資力検査がありますが,民事法律扶助制度により国の立替制度を利用することも可能です。
免責審尋
破産しても免責がなされなければ,破産した意味がありません。免責許可決定を得て免責となりますが,免責には要件があります。無事に免責許可決定が得られるよう弁護士がお手伝い致します。免責手続きとしては免責審尋があります。同時廃止の場合は,破産手続き終了後,しばらくして裁判所から呼び出しがあります。管財事件の場合は,債権者集会において免責審尋がなされます。
破産手続きが終了し,裁判所により免責許可決定がなされれば,全ての手続が終了します。
なお,所得税,固定資産税など滞納した租税等は免責されません。またその他免責されない債権があります。詳しくは弁護士にご相談下さい。